「手の形に気をつけて弾こうね」
ピアノを習ったことがある方なら一度は必ず言われたことがあるはず・・の
この言葉、お子様の年齢によっては手の形よりもその前に大切なことがあるかもしれません。

- 子どもの発達は身体の中心から外側に向かって
- お子様の発達段階を知る
- 指と頭(脳)をつなげる
【子どもの身体の発達は中心から外側に向かっている】
例えば絵を描くとき、子どもはこのような順でいろんな形を描けるようになっていくものです。
点→直線→曲線→円
これは
肩→肘→手首→指先 とコントロールできる範囲が増えていくからです。
幼児でも字を書ける子はたくさんいますが何となく不恰好だったり、逆さ文字、鏡文字になってしまう子も多いのは「図形の方位知覚が未発達である」ことと「まだ指先が自在に動かせない」からです。

【お子様の発達段階を知る】
手首がようやくコントロールできるようになったばかりの子に、「指先をもっと立てて丸くしてね」「指番号を守ってね」という指導は間違ってはいませんが、発達段階として難しいのです。ましてや演奏しながら「指先と手全体の形にも気をつけてね」なんて言われたら頭がこんがらがってしまうのは当然です。
言ってはいけないわけではないのですが、まだ完璧にできることを求める段階ではないかもしれません。
逆に今言わないと悪い形が定着する時期、というものもあります。言っても言ってもならない時はまた別の観点でお子様の発達段階を観察することが大切です。

【指と頭(脳)をつなげる】
手の形よりも大切なことはこれです!まずは一つ一つの指と頭を楽しくつなげることが必要です。
ピアノの上でなくても構いません。
テーブルの上やお風呂の中などでリラックスしながら、お子様の手を広げて「この指動かしてみよう!」と指先を触るふれあい遊び、「おはなし指さん」の歌に合わせて指を一本単位で動かすことなど、楽しく取り組めることはたくさんあります。
そしてお勧めするのは「生活の中でたくさん手指を使うこと」です。
例:
◎ぞうきん、台ふきんなどで「ふく」「絞る」
◎ゆで卵の殻を「むく」、紙パックのストローを「さす」等、不安定なものに対して力を調整しながら行う動作
◎ファスナーを「しめる」、ボタンを「かける」
◎お皿を「洗う」「こする」 等
机の上で鉛筆やシールを使ってすることだけではなく、生活そのものに知育・発達を促す動作の基盤はあります。
それをいつまでも大人が手助けしていては子ども自身の育つ力を奪うことになります。

ピアノの前だけでなく、生活全体を通して手指を育てていれば、最初はうまく動かせる指とそうでない指があると思いますが、少しずつ慣れてきます。まず指と頭をつなぎ自在に動かせる指を作りましょう。
気をつけることも段階的に、発達に合わせて。もちろん教材選びや選曲も。
導入期にできることは「手の形」の前にたくさんあります。ここからは講師の観察力と指導力です。
もちろん最終的には姿勢や手の形、指の使い方など良い音を出すためには気をつけなければいけないことがたくさんあります。今必要なものは何か、目の前のお子様の様子を見て判断していきたいですね。